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デトロイトメタルシティ(ネタバレ有)

 これは奇蹟の映画です。マンガから映画へのトランスポートが、ほぼ完璧な形で行われた、めったに見ることのできない配剤の奇蹟です。

 原作マンガを見ていても面白いし、原作マンガを知らなくても映画として面白い。

 ギャグマンガとしてのエッセンスは余すところ無く拾い上げて、役者の怪演と、音楽の盛り上がりが映画だけの特別な時間を盛り上げているので、四の五の言わずにさっさと観に行ったほうが良い素敵な映画です。

以下 観た人向け。

 

 

 

 

 

 

 手放しでべた褒めかというと、残念ながらそういう訳でもなく、脚本が甘すぎるところが少々気にかかります。要するに歌モノの定番、歌手に憧れる>成功する>何らかの理由で歌えなくなる>精神力とか応援とかで復帰する。というワンパターンなフォーマットに、落とし込まれているので、何か物足りない気持ちで映画が終わってしまいます。

 ギャグ映画としては、タイミングとかのバランスが良くできているので、非凡な才能を感じます。音楽映画としても、クライマックスのライブへの高揚感もあり、「音楽映画」+ギャグ+ネタの大仕掛けが成功していると判断できます。

 ただ、この映画のどうしても欠かせない点として、「デスメタル」があり、主人公自体が否定するぐらいの「殺人」や「暴力」を煽りまくっている、おおよそ子供には聴かせたくない代物です。

 残念ながら「音楽が暴力を煽れば、馬鹿が調子に乗って犯罪を犯す」というのは、あながちこじつけとは言えません。

 この物語でも「デスメタル」の否定が骨子になっているので、やはりクライマックスでは「デスメタル」の肯定、~例えば、デスメファンであっても普段はちゃんとした社会生活していて、ライブの間だけでは反社会人になりきることによって、鬱屈を解放している 等々~が有った後に、心から根岸青年がクラウザーさん化するカタルシスがあれば、もっと良かったのにと、つい思ってしまいます。

 「デスメタル」に関する態度はしっかりしていて、映画のラストで「暴力を煽るものでは無い」というテロップや、(聴くところによると)カラオケでは歌詞がでないなどの、配慮があるので、「根岸くんが、いやいやながら歌ってる過激デスメタル」というポジションを維持しているのは、音楽業界の理性として、評価しても良いところではないでしょうか。

 個人的に大好きなのは、大御所KISSのジーン・シモンズ演ずるジャック・イルダーク勇退後の小芝居で、思想とか、理念とか、反逆とかが、良い意味でのグダグダになっていくクライマックスは、なかなかお目にかかれる物ではありません。

 原作マンガも楽しく読んでますが、つばを吐きかけるなどのシーンが不快なために、面白いけど二度と読みたくないマンガになってます。(これはかなり個人的な理由に由来するので、作品否定ではありません。念のため) 映画では、そういうシーンは見あたらず、かわいいパンチラ程度に納めているので、万人に向けてのエンタテインメントが、真剣に作り込まれている映画と言えるのではないでしょうか。

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